土壌汚染対策

 【土壌汚染対策法の概要】

 1.対象物質

 鉛、砒素、トリクロロエチレンその他の物質(放射性物質を除く)であって、それが土壌に含まれることに起因して人の健康被害を生ずるおそれのあるもの。26項目の「特定有害物質」があります。

(1)揮発性有機化合物…四塩化炭素、クロロエチレン、ジクロロエタン(1・2)、ジクロロエチレン(1・1、1・2)、ジクロロプロペン(1・3)、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエタン(1・1・1、1・1・2)、トリクロロエチレン、ベンゼン

(2)重金属等(化合物含む)…カドミウム、六価クロム化合物、シアン化合物、水銀、セレン、鉛、砒素、ふっ素、ほう素

(3)農薬等…シマジン、チオベンカルブ、チラウム、PCB、有機りん化合物

 2.土壌汚染状況調査のきっかけ

 土壌汚染対策法においては、次の(1)~(3)の場合に土壌の汚染について調査し、都道府県知事等に対して、その結果を報告する義務が生じます。

1)有害物質使用特定施設(※)の使用の廃止時<法第3条)

 ※有害物質使用特定施設…水質汚泥防止法第2条第2項の特定施設であって、特定有害物質をその施設において、製造し、使用し、又は処理するもの。

 ●使用が廃止された有害物質使用特定施設の土地の所有者、管理者又は占有者(以下「所有者等」という)に調査義務が発生します。

 ●土地の利用方法からみて土壌汚染による健康被害が生ずるおそれがないと都道府県知事等の確認を受けた場合には、調査義務が一時的に免除されます(利用方法が変更され、当該確認が取り消された場合には、再度調査義務が発生します)。

 ●調査義務が一時的に免除された土地において、900㎡以上の土地の形質の変更をする場合には、土地の所有者は、都道府県知事等に対して、あらかじめ届出をする義務が発生し、土地の所有者等に土壌汚染状況調査の実施命令が発出されます。

(2)一定規模以上の土地の形質の変更の届出の際に、土壌汚染のおそれがあると都道府県知事等が認めるとき<法第4条>

 ●一定規模(※)以上の土地の形質の変更を行おうとする者には、都道府県知事等に対して、土壌の形質の変更に着手する30日前までに届出をする義務が発生します。

 ※一定規模…3,000㎡(ただし、現に有害物質使用特定施設が設置されている土地については900㎡) 

●この場合、環境省令で定める方法により、土地所有者等の全員の同意を得て、指定調査機関に調査を行わせ、その結果を併せて都道府県知事等に提出することができます。

●届出があった土地にについて、都道府県知事等が土壌汚染のおそれ(※)があるとみとめられるときは、土地の所有者等に、土壌汚染状況調査の実施命令が発出されます。

 ※土壌汚染のおそれ…以下(①から⑤)の基準に該当する土地かどうかを、行政が保有している情報により判断します(規則第26条各号) 

  ①特定有害物質による汚染が土壌溶出量基準又は土壌含有量基準に適合しないことが明らかである土地

  ②特定有害物質が埋められ、飛散し、流失し、地下に浸透した土地

  ③特定有害物質を製造・使用・処理している土地又はしていた土地

  ④特定有害物質が貯蔵・保管されている土地又はされていた土地

  ⑤その他②から④までと同等程度に特定有害物質によって汚染されているおそれがあると認められる土地

(3)土壌汚染により健康被害が生じるおそれがあると都道府県知事等が認めるとき<法5条>

 ●都道府県知事等が健康被害のおそれがあると認めるときは、土地の所有者等に土壌汚染状況調査の実施命令が発出されます 

 

3.自主的な土壌汚染調査

 土壌汚染対策法においては、上記1の(1)~(3)までの調査のほか、自主的に調査した土壌汚染の調査を基にして、都道府県知事等に下記3の区域の指定を任意に申請することができます(法第14条)

 ただし、法第4条第2項の規定による土壌汚染状況調査の結果があった土地は除きます。

<申請の条件>

 ●公正かつ公定法により実施された調査結果であることが必要です。

 ●申請を行おうとする土地に複数の所有者等がいる場合には、その全員の合意を得ていることが必要です。

 ●土壌汚染が明らかである場合などにおいて調査を省略して区域の指定を申請することも可能です。

 

4.区域の指定等

 都道府県知事等は、土壌汚染状況調査の結果報告を受けたとき、報告を受けた土地を、以下のとおり健康被害のおそれの有無に応じて、要措置区域又は形質変更時要届出区域(以下「要措置区域等」という。)に指定します。

(1)要措置区域

 土壌汚染状況調査の結果、汚染状態が土壌溶出量基準又は土壌含有基準に適合せず、土壌汚染の摂取経路がある区域です。

 健康被害が生じるおそれがあるため、汚染の除去等の措置が必要です。(法第6条)

 土地所有者は、都道府県知事等の指示に係る汚染除去等計画を作成し、確認を受けた汚染除去等計画に従った汚染の除去等の措置を実施し、報告を行うこと。(法第7条)

 土地の形質の変更の原則禁止(法第9条)

(2)形質変更時要届出区域

 土壌汚染状況調査の結果、汚染状態が土壌溶出量基準又は土壌含有量基準に適合せず、土壌汚染の摂取経路がない区域です。

 健康被害が生じるおそれがないため、汚染の除去等の措置は必要ではありません。(法第11条)

 土地の形質の変更をしようとする者は、都道府県知事等に届け出ること。(法第12条)

<「要措置区域」「形質変更時要届出区域」に指定されるまで>       

    (土壌汚染状況調査結果を都道府県知事等に報告)

              ⇩

 (土壌溶出量基準/土壌汚染含有基準を超える有害物質があるかないか)

            (ある)          (ない)規制対象外(基準適合)

      

    規制対象(基準不適合)

      

    (健康被害のおそれ(※)があるかないか)

  (おそれあり)         (おそれなし) 

   要措置区域(法第6条)      形質変更時要届出区域(法第11条)

  ※健康被害のおそれの有無の考え方

  ・周辺の土地において地下水の飲用等があるかどうか

  ・人が立ち入ることができる土地かどうか

 

5.汚染の除去等

 土壌汚染対策法の趣旨の一つは「汚染された土壌を適切に管理していくこと」です。そのため、健康被害のおそれのある要措置区域では、都道府県知事等は、土地の所有者等に対し、人の健康被害を防止するために必要な限度において、講ずべき汚染の除去等の措置(指示措置)等を示して、汚染除去計画等計画の作成及び提出を指示します。 

 指示措置

 ●地下水等経由の摂取リスクの観点からの土壌汚染がある場合(土壌溶出量基準に適合しない場合)は、地下水の水質の測定、封じ込め(※)等です。

 ※封じ込め…汚染土壌を封じ込めて地下水等による汚染の拡散を防止する措置です。原位置封じ込めや遮断工業封じ込め等があります。

 ●直接摂取のリスク観点からの土壌汚染がある場合(土壌含有量基準に適合しない場合)は、盛土等です。

   なお、指示措置が土壌汚染の除去(※)とされるのは、土地の用途からみて限定的な場合になります。

   ※土壌汚染の除去…汚染された土壌を除去や浄化する措置です。掘削除去や原位置浄化があります。

 土地の所有者等は指示措置のほか、これと同等以上の効果を有すると認められる汚染の除去等の措置のうちから、講じようとする措置(実施措置)を選択することができます。

 汚染除去等計画に記載された実施措置については、各措置に応じ技術的基準が定められており、これに適合しない場合は、都道府県知事等から計画の変更命令が出されます。

 土地の所有者等は、除染除去等計画に記載された実施措置が完了したときは、都道府県知事等に措置の完了等の報告をしなければなりません。

 一方、形質変更時要届出区域では、土壌汚染の摂取経路がなく健康被害の生ずるおそれがないため、汚染除去等の措置を求められることはありません。ただし、土地の形質の変更を行う場合は、都道府県知事等にあらかじめ届出が必要になります。

 

6.搬出の規制

 要措置区域等からの汚染土壌を搬出する場合には、事前の届出義務があります。このほか、汚染土壌の運搬は、運搬基準の遵守と管理票の交付・保存義務があります。

 さらに、汚染土壌を要措置区域等外へ搬出する者は、原則として、その汚染土壌の処理を汚染土壌処理業者に委託しなければならないと定められています。汚染土壌処理業者とは、汚染土壌の処理を業として営む者をいい、営業に当たっては、都道府県知事等の許可が必要です。

 なお、汚染土壌の処理の委託として、汚染土壌について処理の委託を行わずに、一定の条件を満たした他の要措置区域へ移動することができます。

(1)搬出の届出

 汚染土壌を搬出する際には、搬出する者は搬出に着手する日の14日前までに、都道府県知事等に対する届出の義務があります。(法第16条)

(2)運搬基準

 土壌の運搬に伴い、汚染を拡散させるおそれがあるため、運搬に関する基準が定められており、自動車・船舶・列車等の車両の両側面に汚染土壌を運搬している旨の表示義務があります。また、運搬委には、自動車等に積載している状態のほか、保管施設での一時的保管も含まれます。

(3)管理票

 土壌汚染対策法では、汚染土壌を搬出、運搬、処理又は使用する際に、管理票を使用することを定めています。(法第20条)管理票は、汚染土壌を運搬するときや処理するときなど、期限内に関係者に交付し、又は回付する義務などがあります。

(4)汚染土壌処理業者

 汚染土壌処理業とは、都道府県知事等から許可を受けて汚染土壌の処理を行う事業のことです。許可を受けるには、施設と申請者の能力が基準を満たしていることのほか、欠格事由に該当していないことが必要です。

 

7.指定調査機関

 土壌汚染対策法に基づく調査は、その結果によってその土地に対する土壌汚染対策の方針が左右されるため、信頼できる調査結果を確保しなければなりません。

 そこで、調査を的確に実施することができる者を環境大臣又は都道府県知事が指定し、土壌汚染対策法に基づく土壌汚染の調査は、その指定を受けた者のみが行うこととされいます。この環境大臣又は都道府県知事に指定され、土壌汚染対策法に基づく調査を行う者が指定調査機関です。

 

8.指定支援法人  

 指定支援法人とは、土壌汚染対策法に定める支援業務を適正かつ確実に行うことができると環境大臣から認められ、指定を受けた者のことです。

 平成14年12月25日に、財団法人日本環境協会(平成25年4月1日公益財団法人に移行)が指定されました。 

 

【土壌汚染調査に関する初期調査(資料等調査)】

 初期調査(資料等調査)として、汚染の可能性の有無をの調査を、地歴調査を中心として、以下の手順により行います。

1.所有者へのヒアリング

 可能であれば、所有者に対して、過去の使用状況等についてヒアリングを行います。

2.(閉鎖)登記簿のチェック

 調査対象地の(閉鎖)登記簿を閲覧する。過去に特定有害物質を使用する可能性のある業種の企業が所有者であった場合、土壌が汚染されている可能性もあります。また、これにより、汚染原因者の特定が可能になる場合もあります。

3.地図・航空写真等のチェック

 登記簿では必ずしも、その土地の使用方法まで明らかにならない場合も多いので、図書館等で過去の住宅地図、航空写真や古地図、地形図などの確認が必要になる場合もあります。例えば、今は一般の住宅が建っているが、過去には工場などの敷地だった場合などは要注意です。また、行政、地元精通者へのヒアリングも有用です。

4.土壌汚染対策法上の区域に指定されているか否か

 土壌汚染対法で要措置区域、形質変更時要届出区域(旧法であれば指定区域)の台帳を閲覧します。これらの区域に指定されている場合には、台帳記載事項(汚染の状況、除去措置の有無、現在の状況等)のチェックを行います。なお、台帳の管理は、都道府県の環境部、環境保全部といった環境担当部署です。

5.調査命令の確認

 調査対象地がそれぞれの区域に指定されてない場合でも、人の健康被害が発生する可能性があるとして、都道府県知事が調査命令を発している場合もあるので、その旨を上記の環境担当部署で確認します。調査命令が出ている場合は、土壌汚染が存在している可能性が高いと考えるべきです。

 

【土壌汚染と不動産評価

 土壌汚染が汚染されている場合の土地の評価方法は未だ確立されていませんが、現段階でにおいて実務上実施可能で最も一般的であると思われる、土壌汚染地の評価方法は以下のようになります。

1.土壌汚染の有無の確認と調査

(1)初期調査(資料等調査)(上記の「土壌汚染に関する初期調査」を参照下さい)

 初期調査(資料等調査)の情報から、対象地において、以下のことなどを想定します。

 ①どのような原因によって土壌汚染が発生している可能性があるか

 ②土壌汚染が発生しているとすれば、どの地点(範囲)で発生している可能性が高いか

 ③汚染物質は地下でどのような動きをするか

 資料等調査段階で組み立てた想定は、次の概況調査、詳細調査で立証します。

 また収集した情報をもとに調査対象地を以下のように分類します。

 ①土壌汚染の存在するおそれがあると認められる土地

 有害な化学物質を使用した履歴がある施設や廃棄物の埋設、地下タンクや焼却炉などの土壌汚染の原因となる施設が設置された場所やその周辺、有害な化学物質の移動経路(地下埋設設管)にあたる土地

 ➁土壌汚染が存在するおそれが少ないと認められる土地

 土地の使用履歴が不明であり、有害な化学物質の移動経路やその他、土壌汚染との関りが否定できない土地

 ③土壌汚染が存在するおそれがないと認められる土地

 有害な化学物質の使用履歴がなく、従来よりグラウンドなどの土地で農薬なども使用されず、廃棄物等の埋設もない土地

(2)概況調査

 初期調査で汚染の可能性が判断された場合、敷地全体について汚染物質使用履歴に応じた範囲ごとのサンプリング調査を行って分析を行います。これにより、汚染の存否、汚染物質の平面的な分布の把握などがなされます。

 概況調査では、表層土壌の採取・分析により、土壌汚染が発生している可能性の評価を行います。

 また、トリクロロエチレンなどの揮発性有機化合物は、重金属などと比べ土壌の吸着が少ないことから、地表付近にとどまらず遮水層がある地下深部にまで到達してしまう場合があります。よって、表層土壌の分析により土壌汚染の有無を評価することは適当な方法でないため、表層土壌ガス調査を実施します。

 概況調査の結果、土壌汚染の発生が確認されたり、汚染の可能性がある場合には、引き続き詳細調査を実施します。

(3)詳細調査

 ボーリング装置などを利用して、深さ方向で土壌サンプルを採取・分析したり、地下水調査を行ったりして、汚染物質の内容や汚染の範囲を絞り込みます。

 ボーリング調査の深度は、汚染物質によっても異なりますが、重金属による場合は5m程度、揮発性有機化合物の場合は10m以上になることが多いです。また、土壌中の汚染物質濃度を測定し、地表から浸透した汚染物質が地下でどのように広がっているか評価できます。

 以上の初期調査(資料等調査)、概況調査、詳細調査の結果をあわせ、以下の各項目についての整理を行います。

 ①土壌汚染が発生している範囲の三次元的な分布

 ②地下水の流れと地下水中の汚染物質の分布

 ③土壌・地下水汚染の発生原因

 ④地中における汚染物質の動き

 ⑤土壌・地下水汚染による周辺環境への影響

 ⑥土壌・地下水汚染の対策範囲

 ⑦対策を実施する際の制約条件等

2.土地の評価方法

(1)土壌汚染が存しないことが判明している場合

 すでに土壌汚染状況調査が行われ、調査によって汚染がないことが判明している場合と、汚染があったが、すでに浄化が行われている場合の2種類がある。いずれの場合も、土壌汚染は価格形成要因から除外して通常の評価を行います。

(2)土壌汚染が存することが判明している場合

●原則的な方法

 調査によって土壌汚染が存することが判明している場合の評価方法の原則は以下のとおりです。

土壌汚染がある土地の評価額 = 土壌汚染がないものとしての土地の評価

                - 浄化措置費用 - 心理的嫌悪感(Stigma)減価

 この場合、専門機関に浄化費用の見積額を算出してもらい、土壌汚染がないものとしての評価額から浄化見積額と浄化後の心理的嫌悪感にかかる減価額を控除して求めます。

 

【土壌汚染調査の費用】

 具体的な調査内容や規模によって変わります。

 最初に行う地歴調査であれば、30~50万円で済む場合もあります。個別のケースで変わります。